ウサギは集団で暮らす動物であり、嗅覚や視覚、聴覚を活用して仲間とコミュニケーションを取ります。この記事では、ウサギがどのように情報を交換するのかを解説するとともに、私と愛兎「らむね」との実体験を交えて、飼育者が知っておきたいポイントをご紹介します。
特に多頭飼育の場合、ウサギ同士のやり取りを理解することで、より良い環境を整えることができます。
ニオイ(嗅覚)によるコミュニケーション
ウサギは視力が弱い分、嗅覚が非常に発達しています。ウサギ同士は匂いを嗅ぐことで挨拶を交わし、安全確認を行います。飼い主である私たちに対しても、ウサギは匂いを通して信頼を築こうとします。
「らむね」をお迎えした当初は、私が手を近づけると、警戒してスッと離れていく日々が続きました。それでも毎日、彼女の目線に合わせてゆっくり手の甲を差し出し、無理に触れずにそばで静かに過ごしていると、少しずつ距離が縮まっていったのです。
うさぎとのあいさつの交わし方
- ウサギがリラックスしているときに、手の甲をそっと差し出す
- ウサギが近づいてくるまでじっと待つ
- 匂いを嗅いでいるときは手を引っ込めたり、捕まえたりしない
- ウサギが去っても、次に来るのを気長に待つ
- また寄ってきたら、驚かさないように優しく撫でてみる
これが、ウサギとの「こんにちは」の始まりです。
初めて撫でさせてくれた日のこと
忘れられないのが、「らむね」が初めて私に撫でさせてくれた日のことです。部屋の隅で毛づくろいをしていた「らむね」が、ふと私のそばに寄ってきて、私の手の甲に鼻をピトッとくっつけてきたのです。驚きと嬉しさで心がいっぱいになりながら、そっと頭を撫でてみました。
「らむね」は少し身をすくめたものの、逃げることなくそのままじっとしていました。それは、「らむね」が初めて私に心を開いてくれた瞬間でした。あの時のぬくもりと柔らかさ、そして信頼の重みは今でも忘れられません。
その後、「らむね」は私の手や膝の上に鼻をちょこんと乗せてくるようになりました。「匂いを確認する=安心できる存在」と認識してくれたようです。ときどき、私の手に自分のあごをこすりつけて、ニオイ付けをしてくれることも。
これは、自分のテリトリーの一部として私を認めてくれている証です。まさに、ウサギにとってニオイは「大切な相手とつながる手段」なのです。
視覚による警戒
ウサギのしっぽの裏は白くなっており、危険を感じたときにはそれをピンと立てて仲間に知らせます。野生のウサギはその白いサインを見て逃げる準備をします。
「らむね」もたまに、物音に驚いてしっぽをピンと立てることがあります。でも、敵のいない我が家では、基本的にしっぽは「へら」のようにだらんと下がってリラックスしています。
後ろ足を投げ出して伸びている姿を見ると、「安心してくれているんだな」と、私もほっとし、嬉しくなります。
音(聴覚)による警告
ウサギは「スタンピング」と呼ばれる行動で、後ろ足を地面に叩きつけて仲間に危険を知らせます。まろんも、最初は物音に敏感で、夜中にスタンピングをして私をびっくりさせたことが何度もありました。
でも、私の生活パターンに慣れてきたのか、最近ではスタンピングもぐんと減りました。むしろ、まろんの方から鼻でツンツンしてきたり、そばに寄ってきて眠ったりと、音ではなく「行動」で私に気持ちを伝えてくれるようになったのです。
ある日、電話で少し大きな声を出していた私に対して、「らむね」が急にスタンピングをしました。その瞬間

あ、ごめんね、うるさかったね
と思わず謝ってしまいました。ウサギとの暮らしは、こうした小さな気づきの連続でもあります。
意思疎通が深まったと感じた瞬間
「らむね」との暮らしが進むにつれて、彼女の表情や仕草から「今、こうしてほしいんだな」と感じ取れるようになってきました。たとえば、撫でてほしいときは鼻先でツンツンと私の手をつつき、構ってほしいときは目の前でドンと座り込むのです。
中でも忘れられないのは、ある日私が掃除機をかけていたときのこと。以前の「らむね」は掃除機の音が大嫌いで、音がするたびにケージの奥に隠れて出てこなかったのですが、この日は様子が違いました。掃除機を止めたとたん、「らむね」がケージから出てきて、私の足元にやってきたのです。
「怖かった?」と声をかけると、まろんは静かに私の足に鼻を押し付けてきました。その仕草は、まるで「でも、ちゃんと待ってたよ」と言っているかのようでした。以前の彼女では考えられない行動に、私は胸がいっぱいになりました。
さらに最近では、私が寝室に行こうとすると、「らむね」がトコトコとついてくるようになりました。足音や動作の流れを覚えていて、「一緒に行きたいな」と感じているのだと思います。こうした日々の中で、私たちは少しずつ、でも確実に通じ合っていると実感しています。
ところで、ウサギは基本的に噛むことをしません。噛むのは人に対してのみです、そういう時は人間に無理やり抱かれたなど、嫌なことをされた場合です。噛むことで嫌な事から解放されると学習するのです。
おわりに
ウサギは「言葉」を使いませんが、ニオイや音、仕草を通して確かな気持ちを伝えてくれる生き物です。「らむね」やほかのウサギたちと過ごす中で、私は「心の通じ合いとはこういうことかもしれない」と実感しました。
これからウサギを迎える方や、ウサギとの距離感に悩んでいる方も、焦らずゆっくり関係を築いてみてください。毎日の小さなふれあいの中に、ウサギの優しいメッセージがきっと込められていますよ。
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